wajin's diary

慶應に潜む陰キャ

どっちが勝ってるのかわからなかった試合

ミュラーの守備、ミュラーの守備、ミュラーの守備です」

 先日のUEFA Champions League Quarter Finalのバイエルン-バルセロナ戦において実況の下田さんが放った言葉である。この言葉に今のバイエルンの全てが詰まっている。4-2-3-1のトップ下という攻撃的なポジションを務めるトーマス・ミュラーが守備をして、素早くトランジッションをし、相手ゴールへと迫っていく。なんならその更に前にいる1トップのレバンドフスキもしっかりプレスをかける。実際彼のプレスから4点目のミュラーのゴールが生まれ、コマンの入った早々のゴールチャンスも生まれた。バイエルンのプレスの凄みは、ミュラーのプレスを起点として全員が連動してプレスを行うことにある。素早くボールホルダーに対して3〜4人が寄せていき、あっという間に敵陣で奪ってショートカウンターへとつなげる。

 一方でメッシやスアレスはどうだろうか。散発的にプレスに行きはするものの、おそらく戦術的なものではなく、個々の判断でプレスするだけなので中盤の選手の動きが全く連動しておらず、結果的に簡単に躱されてしまい、彼らがただ走っただけになってしまう。デヨングやビダル、そして後半から入ったグリーズマンは守備の意識が高くプレスに行こうとするが、これもやはり戦術として監督から言われていることではないために、中途半端に終わることが多い。また、バイエルンのプレスのように複数人が同時に寄せていく訳ではないので、ボール回収の成功率も必然的に低くなる。監督による指示のもと戦術的な、練度の高い守備が行われているか。これがバイエルンバルセロナを8-2というスコアになるほどに差を生んだ要因であることは間違いない。

 バイエルンは、守備時には前からボールホルダーに対して断続的にプレスをかけて行き、繋ごうとする相手を中盤のゴレツカやチアゴやキミッヒ、下りてきたミュラーや両SHが潰してボールを奪う。そしてロングボールで裏を狙おうとする相手にはアラバとデイビスのスピードで対応する。またボールを奪った後の攻撃も速く、それまで守備をしていた前線・中盤の選手が一気に相手ペナルティエリアへと雪崩れ込み、ロングカウンターで攻めていく以外では必ず複数人がペナルティエリアに存在する状況を作り出す。

 一方で組み立てながら攻撃をする際には2人のアンカーのどちらかが両CBの間に下りていき、実質3バックの形をとることで相手FWに対して有利な人数を保ちながら組み立てていく(チェルシー戦1st legの際にはキミッヒが、チェルシー戦2nd legやバルサ戦ではチアゴがその役割を果たした)。CBのボアテングやアラバ、そしてアンカーの二人は精度の高いロングパスを供給できる。特に右CBのボアテングからLSBのデイビスに対するパスは幾度となく行われており、バルサ戦においても高い位置をとるデイビスに対してボアテングは序盤からロングパスを出していた。

 これに対してバルセロナは守備時に4-4-2のフォーメーションをとり、バイエルンのサイドからの攻撃を防ごうとした。そのため、パスの供給源であるボアテングに対して強くプレスをかけに行くことができず、必然的にボアテングからデイビスへのパスコースは常に開通されたままとなっていた。バルサはサイド攻撃を恐れて手を打ったにも関わらず、その大元を潰すことができなかった。また、バルサの高い守備ラインを超えるためにワイドレーンを使った攻めを行おうとセメドやアルバが裏へと抜ける動きを行っても、バイエルンのSB及びSHの迅速な守備によって阻まれ、彼らが攻めのために空けたスペースを逆にバイエルンに利用されてピンチを招くといったシーンが多く見られた。特に最初の失点シーンでは、セメドがサイドから攻め上がって行ったものの失敗し、ボールを戻したところで潰されて、彼が空けたスペースからペリシッチによる爆速カウンターを受けていた。

 そして、繋ぐ意識が強すぎるバルセロナはプレッシングをかけられても後ろに戻すか近くの人間に託す以外の選択肢がなく、クリアリングを全くしない。この悪癖が2失点目につながってしまった。相手のパスをセメドがカットした際、即時にバイエルンの選手4人がボールに向かって収縮してきたのだからクリアをすればいいものを、セメドは近くにいたセルジロべルトにボールを預けただけだった。そして簡単にボールを奪われ、ショートカウンターからペリシッチによる2点目が決まった。失点直後のオウンゴールバルサペースになってきていた段階での失点だったために、これ以降流れは完全にバイエルンのものとなってしまった。

 また、バルセロナは繋いで攻めて行く際に必ずと言っていいほどメッシを経由させようとする。そのため攻撃時は4-3-3にシステム変更されるのだが、メッシはRWGのポジションを取らずに中央に停滞したままのため、中央を締めるバイエルンの選手によってメッシへのパスコースは必然的に消えることになる。さらに、繋ぐための陣形だったのでセルジロベルトは右「インサイドハーフ」の役割を与えられていた。つまり右サイドからの縦への攻めはセメドだけに託された形となり、事実上右サイドの攻撃は死んでいた。そしてボールがなかなか来ないためメッシはさらに下がらざるを得なくなり、バルセロナは左サイドからしかまともに攻めることができなくなっていた。これもまたバルセロナ敗退の大きな要因だろう。

 

 今日はリヨンとの準決勝。とりあえず始まる前までに書き上げられて良かった・・・。